1989年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第86回ワールドシリーズ(英語: 86th World Series)は、10月14日から28日にかけて計4試合が開催された。その結果、オークランド・アスレチックス(アメリカンリーグ)がサンフランシスコ・ジャイアンツ(ナショナルリーグ)を4勝0敗で下し、15年ぶり9回目の優勝を果たした。

カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアに本拠地を置く球団どうしの対戦で、両本拠地を結ぶ交通から "ベイブリッジ・シリーズ" や "バート・シリーズ" などと呼ばれた。また、10月17日の第3戦開始前にベイエリア一帯をロマ・プリータ地震が襲ったため、10日間にわたってシリーズが中断したことでも知られる。優勝球団が全試合を通して1イニングも相手にリードを許さなかったのは1966年以来23年ぶり3度目、敗退球団が打線の最後の1巡に同点の走者すら出せなかったのも含めれば史上初と、試合内容としてはアスレチックスの完勝だった。シリーズMVPには、第1戦と第3戦に先発登板して計16イニングを投げ、2勝0敗・防御率1.69という成績を残したアスレチックスのデーブ・スチュワートが選出された。

両チームの過去の対戦

アスレチックスとジャイアンツがシリーズで対戦するのは、1905年・1911年・1913年に次いで今回が76年ぶり4度目である。対戦と対戦の間が76年空くというのは、当時のワールドシリーズ史上最長記録だった。ただ、過去3度の対戦時は、アスレチックスがペンシルベニア州フィラデルフィアを、ジャイアンツがニューヨーク州ニューヨークを、それぞれ本拠地にしていた。そのため、両チームがともにベイエリアに移転してからは、今回が初対決となる。1905年はジャイアンツが、1911年と1913年はアスレチックスが、それぞれ優勝している。

試合結果

1989年のワールドシリーズは10月14日に開幕し、途中に移動日とロマ・プリータ地震による中断期間を挟んで15日間で4試合が行われた。日程・結果は以下の通り。

第1戦 10月14日

  • オークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアム(カリフォルニア州オークランド)

第2戦 10月15日

  • オークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアム(カリフォルニア州オークランド)

ロマ・プリータ地震

第3戦は当初、ジャイアンツの本拠地キャンドルスティック・パークに舞台を移し、10月17日に開催される予定だった。しかし試合開始前の午後5時4分、サンアンドレアス断層の活動によってマグニチュード6.9の地震が引き起こされた。球場も強い揺れに見舞われて停電し、試合は中止された。数日後、コミッショナーのフェイ・ヴィンセントやサンフランシスコ市長アート・アグノス、ジャイアンツの球団幹部らがシリーズ再開について議論した。そこでは同じカリフォルニア州内のサンディエゴで代替開催する案も協議されたが、サンフランシスコでシリーズが開催されるのは1962年以来27年ぶりとあって、ジャイアンツ球団オーナーのボブ・ルーリーが強硬に反対した。結局、球場自体に大きな損傷はなく、シリーズは地震発生から10日後の27日に再開されることになった。

第3戦 10月27日

  • キャンドルスティック・パーク(カリフォルニア州サンフランシスコ)

第4戦 10月28日

  • キャンドルスティック・パーク(カリフォルニア州サンフランシスコ)

評価

ESPNのサム・ミラーは2020年5月、出場2チームの実力がどれほど伯仲していたかやどれほど記憶に残るシリーズとなったかなどを基準に、全115回のワールドシリーズを順位づけした。その結果、今シリーズは114位だった。今シリーズより下位にあるのは、シカゴ・ホワイトソックスによる八百長(ブラックソックス事件)があった1919年だけである。

『ハードボール・タイムズ』のクリス・ジャフは、歴代のポストシーズン各シリーズについて、試合経過やシリーズの展開が一定の条件を満たすのに応じてポイントを付与することで、面白さやつまらなさの数値化を試みている。

  • 2011年10月には面白さについて「1点差試合は3ポイント、1-0の試合ならさらに1ポイント」「サヨナラゲームは10ポイント、サヨナラが本塁打によるものならさらに5ポイント」「7試合制のシリーズが最終戦までもつれれば15ポイント」などと条件を設定した。その結果、同年の両リーグ優勝決定戦まで計262シリーズの平均が45ポイントだったのに対して、今シリーズは5.8ポイントしか獲得できず、歴代106回のワールドシリーズのなかでは最低点を記録した。
  • 2012年10月には、優勝球団が初戦から全勝する "スウィープ" のシリーズを対象に「敗退球団がリードしたイニング数が10以上なら0ポイント、5以上10未満なら2ポイント、……全くなければ25ポイント」「1試合平均の得点差が2未満なら0ポイント、2以上2.5未満なら1ポイント、……3以上3.5未満なら5ポイント、以降は0.5点ごとに2ポイントずつ加算」などの条件を設定し、つまらなさを算出した。その結果、今シリーズは2位を9ポイント上回る67ポイントを獲得し、同年の両リーグ優勝決定戦まで計67度あるスウィープのなかでも "最もつまらないスウィープ" となった。

脚注

注釈

出典

外部リンク

  • Baseball Almanac(英語)
  • Baseball-Reference.com(英語)
  • 1989 World Series - IMDb(英語)
  • 動画共有サイト "YouTube" にMLB公式アカウントが投稿した試合映像
    • 第3戦:1989 World Series, Game 3: Athletics @ Giants

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