リンヘニクス(学名 Linhenykus、「臨河の爪」の意)は、中華人民共和国内モンゴル自治区バヤンノール市から化石が産出した、後期白亜紀に生息したアルヴァレスサウルス科の恐竜の属。Linhenykus monodactylusが知られており、属名は発見地である臨河に由来し、種小名は前肢の指が1本に退化して見えることから「1つだけの指」を意味する。ウランスーハイ層のカンパニアン階から化石が発見されており、砂丘とオアシスの広がる半砂漠気候の環境においてオヴィラプトル科のウラテロンやトロオドン科のリンヘヴェナトルと共存した。
特徴
リンヘニクスは小型の恐竜であった。グレゴリー・ポールによれば全長は約50センチメートル、体重は約500グラムに達する。大腿骨長は約7センチメートルである。
アルヴァレスサウルス上科の特徴は短い前肢と、その先端で大型化した第二指である。かつてアルヴァレスサウルス科は左右それぞれの前肢に1本しか指を持たないと考えられていたが、大部分の種は第三指と第四指を持つことが新しい化石証拠から示された。その中で、リンヘニクスは第二指しか持たないことが判明した最初のアルヴァレスサウルス科恐竜である。短縮した第三中手骨こそ存在するものの、第三指の指骨は完全に喪失している。第四中手骨はホロタイプに保存されていないが、第三指が指骨を欠いていることから、本属において第四中手骨は完全に存在しない可能性がある。本属の分岐分析からは、アルヴァレスサウルス上科において最も指骨が減少しているにも拘わらず、リンヘニクスの大型化した指骨は派生的な属種ほど大きくはなくまた頑強でもないことが示唆されている。
他のアルヴァレスサウルス科恐竜と同様に、リンヘニクスが昆虫食性であった可能性を指摘する研究者も居る。彼らの間では、現生のアリクイのように、本属が鉤爪を用いてアリを掘り出したことが想定されている。
発見
リンヘニクスの化石は、中華人民共和国の内モンゴル自治区において Jonah N. Choiniere と Michael Pittman が上部白亜系のウランスーハイ層(烏蘭蘇海層)から 発見した。層序学的研究からは、当該の層は約7500万年前から約7100万年前にかけてのカンパニアン階とマーストリヒチアン階に相当することが示唆されている。リンヘニクスは部分的骨格であるホロタイプ標本 IVPP V17608 が知られており、頸椎・胴椎・仙椎・尾椎・前肢・後肢・骨盤・足の骨が保存されている。本属は徐星らによって2011年に初めて記載された。
ギャレス・ダイクとダレン・ナイシュはリンヘニクスがパルヴィカーソルのジュニアシノニムである可能性を指摘したが、この解釈は徐星らが否定した。その後のアルヴァレスサウルス上科の研究においてもこの見解は受容されていない。
分類
以下のクラドグラムは Makovicky, Apesteguía and Gianechini (2012) に基づき、アルヴァレスサウルス科の系統関係を示す。
出典



