ジュラティラント(学名:Juratyrant "ジュラ紀の暴君"の意味)は、イングランドの上部ジュラ系下部チトニアン階から化石が産出した、ティラノサウルス上科の恐竜の属。J. langhami の1種のみが含まれる。
発見
完全な骨盤と部分的に揃った脚、頚椎・脊椎・尾椎からなる単一の標本が知られている。1984年にドーセット州で発見されたこの標本は複数の論文で言及されたが、正式に記載されたのは2008年だった。種小名は標本を発見した化石商人ピーター・ラングハミを称えたもの。標本はジュラ紀後期の最後の時代にあたるチトニアンのキンメリッジ粘土の地層から発見され、1億4930万年前から1億4900万年前を示す Pectinatites pectinatus ammonite zone に属する。
記載
OUMNH J.3311-1 から OUMNH J.3311-30 までの一連の標本からなる骨格がジュラティラントのホロタイプ標本である。頚椎と5つの脊椎、完全な仙椎、5つの尾椎、完全な腰帯、両大腿骨、両脛骨および様々な骨断片を含む。腸骨の数多くの特徴がストケソサウルスのものと一致したためかつてはストケソサウルス・ラングハミとして扱われていたが、後の研究で恥骨の差異が示され、種レベルの相違とみなすことができず、ストケソサウルス・ラングハミは独自の属を持つこととなった。ストケソサウルスから分離し、ジュラティラントは4つの固有派生形質および固有派生形質と推定される2つの特徴(保存状態により判断が困難)で定義づけられることとなった。
- 坐骨の伸びた部分が折れているように見える
- 腓骨の端が脛骨の近位端へ明確な低い隆起を伴って伸びている
- 坐骨に凸状の小結節が存在する
- 寛骨臼の下で恥骨に深い水平の穴が存在する
- 薄いものの卓越した突起が第5仙椎に存在する(推定)
- 広く凹状の伸筋の溝が大腿骨に存在する(推定)
分類
ジュラティラントは2008年にロガー・ベンソンによりもともとストケソサウルス・ラングハミとしてストケソサウルス属に分類されたが、同属の模式種ストケソサウルス・クレヴェランディと必ずしも近縁ではないことが後の研究で示された。ストケソサウルス・ラングハミは2013年にロガー・ベンソンとスティーブン・ブルサッテにより独自の属であるジュラティラント属に正式に再分類され、ディロングよりも進化したティラノサウルス上科の中の分類群でストケソサウルス・クレヴェランディとの姉妹群として位置付けられた。この分類群にはエオティラヌスも含まれる。
しかし、2013年にLoewen らは、シノティラヌスと共有する前寛骨臼の狭い窪みに基づき、プロケラトサウルス科の中でストケソサウルスと姉妹群をなす位置にジュラティラントを配置するクラドグラムを発表した。数多くのティラノサウルス上科の恐竜の腸骨が不完全あるいは未知であり、現在知られているよりもこの特徴は広く共通している可能性がある。以下にそのクラドグラムを示す。
ところが、2016年の最大節約法とベイズ推定を用いたブルサッテとカールの研究では、ストケソサウルスとジュラティラントはプロケラトサウルス科とディロングよりもわずかに進化したティラノサウルス上科として系統学的に位置付けられた。すなわち、プロケラトサウルス科から除外されたということである。さらに、この系統解析においてはエオティラヌスはこれらの属の姉妹群として分類されている。
出典




